スポーツのち晴れ

スポーツを軸にあれこれ書くブログです。

ドリブル論争と戦術的ピリオダイゼーションのお話

最近TwitterのTLをにぎわせたドリブル議論。

ちょっと旬を過ぎてしまったので今更感はありますが気になったことがあったので一応書いておこうと思います。

 

議論の的になったのはドリブルデザイナーとして有名な岡部将和さんが提唱している99%抜けるドリブル理論です。相手を抜くという局面に特化したこの練習について議論が始まったのはスケゴーさんのツイートからでした。

 

 

(実際の議論はこのツイートよりも早くに始まっていましたが最もわかりやすく議論の核心をついているこちらのツイートを引用させていただきました)

 

ここからTwitter上では様々な意見が飛び交いました。

抜くという局面のみを切り取って練習することに意味があるのか?

ドリブルの前後のプロセスも重要であってそこの練習をする必要があるのではないか?

相手を抜くという局面が存在するならば練習する必要があるのではないか?

ドリル形式のトレーニングも重要なのではないか?

 

著名な方々もこの議論に参加されたためより一層ヒートアップしていきました。

 

 

様々な意見が飛び交う中、局面のみを切り取っての練習と対極の位置に置いて多くの方が語っていらっしゃったのが「戦術的ピリオダイゼーション」の考え方です。現在最先端のトレーニング理論である戦術的ピリオダイゼーションの考え方に反しているという意見が多く見受けられました。ちなみに後で書きますが日本における戦術的ピリオダイゼーションの第一人者である林さんが異なる意見だったのは面白かったです。

 

この一連の議論で気になったのがこの議論に参加していた識者の方々を除く多くの方が戦術的ピリオダイゼーション=「サッカーはサッカーでしか上手くならない」 という意味合いのみで議論を進めていた点です。

 

ですがそもそも戦術的ピリオダイゼーションの考え方はその理解で正しいのでしょうか?戦術的ピリオダイゼーションについて正しく理解できていない状態で言葉ばかりを安易に使っていくと本来とは異なる意味合いになっていき議論も深まっていかないのではないかと感じました。

 

なので今回は戦術的ピリオダイゼーションについての自分なりの解釈について書いてそのうえで今回の議論に対する自分なりの解釈を書いていきたいと思います。あくまで自分の解釈であって正しい解釈ではありません。戦術的ピリオダイゼーションについてポルト大学で専門的に勉強したわけでもなく講習会や書籍でちょっとかじっただけなので間違っている箇所や異なる解釈を持っていられる方もいらっしゃると思います。その時は皆さんのご意見をお聞かせ願えればと思います。

 

戦術的ピリオダイゼーションはポルト大学のビトール・フラデによって提唱されたトレーニングのアプローチ法でヨーロッパではモウリーニョがいち早く取り入れたと言われています。日本ではポルト大学大学院で学んでいらっしゃる林舞輝さんの影響もあって近年脚光を浴び始めています。何を隠そう自分も林さんの講習会に参加させていただき戦術的ピリオダイゼーションについての理解を深めた身です。それまでは?マークでしたが講習会のおかげで多少は理解できるようになったのでその共有も兼ねて書いていきたいと思います。


www.footballista.jp

 

さて戦術的ピリオダイゼーションについての話を進めていきたいと思いますが、多くの場合、戦術的ピリオダイゼーションについて語るときに「サッカーはサッカーでしか上手くならない」という言葉のみが先行して語られていますがそれだけの理論ではありません。戦術的ピリオダイゼーションについて理解するにはまず「ゲームモデル」について学ぶ必要があります。

 

ゲームモデルはプレーモデルと言われることもありますが(個人的にはゲームモデルの方がイメージしやすいのでこちらを使います)ゲームモデルを一言で説明するならば「そのチームが目指しているサッカー」です。

 

ここで重要なのは「理想としているサッカー」ではないということです。似たような意味合いですが微妙にニュアンスが違います。ゲームモデルは理想ではなく現実。なので日本代表について語る際によく使われる「自分たちのサッカー」なるものはゲームモデルではありません。あれはただの理想(だと思う)てか「自分たちのサッカー」って何?

 

 

ではゲームモデルの構築はどのように行われるのでしょうか?ゲームモデルを構成するのはチームの目標・レベル・環境・文化・歴史など多岐にわたります。ゲームモデル=「試合模型」という直訳が最もイメージしやすいかもしれません。チームが帰るべき原点ですべてのベースとなるものです。バルセロナはゲームモデルのイメージが付きやすいかもしれません。チームの文化や歴史に基づいて長きにわたって同じゲームモデルを構築し続けています。最近はちょっと迷走気味なのは置いときます。他にゲームモデルの例を挙げるとマンチェスター・シティならば「ポゼッションサッカー」、リバプールならば「高い位置でボールを奪ってからの素早いカウンター」です。ポジショナルプレーやゲーゲンプレスはゲームモデルを遂行するためのプレー原則の一つです。ちなみにレアルや日本代表にゲームモデルはおそらくないです。「みんなで頑張る」とかになるのかな?日本代表にゲームモデルがあればこんなにW杯ごとに慌てふためいたりしないはずです。帰る場所がないのが日本代表。

 

そしてチームは自分たちのゲームモデルに沿ってチームを作り上げていきます。選手・システムなどはそのゲームモデルを遂行する手段の一つです。このゲームモデルだからこの選手・システムといった風に決めていきます。決して逆になってはいけません。常にゲームモデルありきでそれを遂行していくのに最も適した選手・システムを選んでいく考えるのが大切です。どっかの国も見習ってほしいです。

 

続いてゲームモデルに基づいてプレー原則を定めていきます。プレー原則は主原則・準原則・準々原則という風に細分化していきます。主原則は4つの場面に分類することができます。攻撃・守備・ポジティブトランジション(PT)・ネガティブトランジション(NT)の4つです(個人的にはトランジションが具体的にどの場面を指しているのかわかりづらいのでこの区分には反対です)ここで重要なのはプレー原則が固定化されたパターンになってはならないということです。あくまで原則という大枠です。大事なのは誰が出ても・どんな場面でもプレー原則を遂行できるようにすることだからです。

 

そしてこれらのゲームモデルに基づいたプレー原則をトレーニングしていこうという理論が戦術的ピリオダイゼーションです。戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」という言葉は「チームのゲームモデルに沿ったプレーをすることができる」という意味に受け取っています。

 

では戦術的ピリオダイゼーションに基づいてシーズンを通してどのようなトレーニングを行っていくのでしょうか?

 

まずプレシーズンキャンプやシーズンの序盤などは自分たちのゲームモデルがチームに定着していない時期です。そのため細かいプレー原則のトレーニングよりもゲームモデルをチームに定着させるようなトレーニングを行います。ゲームモデルがチームに定着してから細かいプレー原則のトレーニングを行っていきます。

 

具体的に日曜日に試合があると仮定して次の日曜日の試合までの一週間をどのように過ごすかを書いていきたいと思います。

 

まず月曜日は試合の翌日のため軽い回復メニューをこなします。そして火曜日は完全オフにします。月曜日と火曜日のメニューを逆にするチームもあるようですがもし月曜日をオフにしてしまうと試合に出場しなかった選手は火曜日を2日連続でトレーニングを行っていない状況(日曜日はベンチのため)で迎えるので試合に出場した選手との間にコンディションの差が生まれるうえに、疲労回復には一般的に48~72時間かかると言われているため回復を促進できる火曜日をオフにしたほうが良いという考え方です。ミルナーみたいに超回復できる選手は例外。

 

水曜日はプレー原則のトレーニングを行っていきます。ただ完全に疲労が回復している状態ではないため負荷のそこまで高くないトレーニングを行います。

 

木曜日は試合終了から72時間経過しているおり、試合までの期間も十分にあるため一週間で最も負荷の高いトレーニングを行います。プレー原則を意識した高負荷のトレーニングや対戦相手を想定した模擬試合など組みます。

 

金曜日もプレー原則のトレーニングを行いますがより一層相手を意識したトレーニングを行います。試合が近づいてきているので負荷はそれほどかけません。

 

試合前の最後の日である土曜日はセットプレーの確認や一週間のトレーニングの再確認といった軽い運動をします。直前に高負荷のトレーニングは行いません。

 

ざっくりではありますがこのようにして一週間のトレーニングを組んでいきます。

 

プレー原則に従ったトレーニングを一週間かけて選手たちに覚えさせることによって試合当日に選手たちは無意識にプレー原則に従った動きをすることがでるようになっています。洗脳みたいなもの。

 

そして戦術的ピリオダイゼーションに基づいたトレーニングを考える時に大切なのは「サッカーはサッカーでしか上手くならない」ということです。やっと出てきたこの言葉。ただ「サッカーはサッカーでしか上手くならない」と言うよりも「サッカーは試合で起こりうる状況を練習しなければ意味がない」という言い方のほうが分かりやすい気がします。

 

要はグラウンドを走る練習をしてもグラウンドを走る能力が身につき、コーンドリブルの練習はコーンを抜く技術が身につくだけ、パターン練習はそのパターンが完璧にできるようになるだけで試合で臨機応変に対応できるようにはならないという考え方です。そのためまずサッカーに特化した練習でないと意味がありません。また攻撃・守備・PT・NTの4つの場面すべてがトレーニングに含まれていないといけません。実際の試合ではそれぞれが分断されてプレーすることはなくすべてが繋がているからです。

 

またこれらのトレーニングは試合で起こりうる状況を練習するため認知・解釈・判断のといった「戦術的インテンシティ」を高める事が出来ます。機械的なトレーニングでは戦術的インテンシティを高めることはできません。ここも今までの練習方法とは異なっている点です。

 

さて戦術的ピリオダイゼーションに関する自分なりの解釈を説明したところで冒頭の議論に話を戻したいと思います。

 

局面のみを切り取って練習することに意味があるのか?

 

上記の通り戦術的ピリオダイゼーションの考え方ならば意味はないということになります。ただ個人的には前後のプロセス(ボールを受けるまで・躱した後)が欠けてるのは事実ですが相手を抜くという局面がある以上その練習をすることに意味はあると思います。99%抜けるからすごいとはあまり思いませんが。だって大事なのは「確率」よりも「機会」だから。

 

もちろんその局面ばかりを練習するのは間違いだと思います。前後のプロセスも練習しなければ曲芸師になってしまうのは目に見えています。ただ戦術的ピリオダイゼーションの考え方と異なるから、試合で起こりえない状況だからと言って否定するのは危険なのではないかと思います(もちろん年代や環境によって異なるので一概に言えませんが)それを言ってしまうと試合前のシュート練習とか何の意味なくなります。そういえば戦術的ピリオダイゼーションの考え方では試合直前のアップはどうすればいいのだろうか?分かる方教えてください(笑)

 

今最も正しいとされている理論であって数年後には間違いだったと判明するかもしれません。というかおそらくそうなるし、そもそも戦術的ピリオダイゼーションは人によって解釈は異なり、完全に理解できているのはビトール・フラデただ一人です。

 

 

日本では物事を二極化する傾向があるように感じます。戦術的ピリオダイゼーションの考え方は個人的には正しい考え方だと思っていますが、だからと言ってすべて正しいとは思っていません。場合によってはドリル形式やパターン練習も必要だと思っているからです。なぜならそれらの練習もチームにプレー原則を落とし込むための選択肢の一つとして考えることができるからです。重要なのはすべての練習が同じ目標(プレー原則)に向かって練習しているか、ドリル形式やパターン練習を行うこと自体が目標になってしまっていないかということです。

 

長々と書いてきましたが以上が自分の意見です。この議論で個人的に気になるのは岡部さんが前後のプロセスやそれまでの戦術的インテンシティの部分が欠けていることを理解したうえで教えていらっしゃるのか、そうでないのかという点と抜くドリブル以外の運ぶ・守るといったドリブルに関してはどのように捉えられているのかという点です。当の本人はわざと言ってないのかもしれませんが、メディアにも数々出られるようになられたのでそこら辺についても一度お話ししていただければ個人的に嬉しいですし議論もより活性化するのではないかと思います。

 

珍しく難しい問題に突っ込んだからなんかうまくまとまらなかったけどこの辺りで終わりにしたいと思います。この記事で何回「戦術的」って言葉使ったんだろうか?分かりづらくてすみません。

 

ここ違うと思った方は気軽に反応ください。お待ちしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスvsベルギー

事実上の決勝戦とも謳われていたフランス vs ベルギー

苦しみながら勝ち上がってきたフランスに対して準々決勝で優勝候補筆頭のブラジル相手に見事な戦術を披露し勝利を収めたベルギー。

勢いのあるベルギー有利と思われていた準決勝ですが内容・結果共にフランスの圧勝と言えるものでした。

なぜこれほどの差が生まれたのか。

勝敗を分けたのは臨機応変な戦術」です。

ベルギー

右 WB でレギュラーのムニエが出場停止となったこの試合ではムニエに代わってスタメンに名を連ねたのはデンベレ

 

攻撃時はセントラル MF にデンベレ、ブラジル戦でそのポジションを担当したフェライニは一列ポジションを上げてシャドーの役回りをこなします。その結果アザールは左サイドにポジションを移し、ブラジル戦で左 WB を担当したシャドリを右 WB に起用します。

 

ここで特筆するのはアザールのポジション。左 WB というよりも左 WG にポジションを取ります。つまり左右非対称のフォメーション。

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一方守備時はシャドリが SB の位置まで下がりデ・ブライネが右、フェライニがトップ下のポジションに入ります。(下図)注目点としてフェライニはポグバに対してマンツーマンで対応します。他の MF と違いフィジカル面で負けないことから起用されたと思われます。(技術面では劣るので何度か振り切られていましたが)

 

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フランス
一方のフランスはいつものフォーメーション。


マテュイディが左サイドからインサイドハーフのポジションに移動して中央を固めるとともにグリーズマンのためにスペースを作ります。グリーズマンはポジションに関係なく攻撃の全ての局面に顔を出し、3トップ(特にジルーとグリーズマン)は頻繫にポジションチェンジをします。(下図) グリーズマンはフリーマンなのでトップ下表記にしました。

 

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試合開始直後は両チームともに前線から激しくボールを奪いに行くようなことはせず落ち着いた試合の入りになります。

 

ポゼッションは圧倒的にベルギー。デ・ブライネとヴィッツルが両サイドにリズムよくパスを散らしながら攻めていきます。ヴィッツルはビルドアップを安定化させ、デ・ブライネはハーフスペースから効果的なパスを供給します。

 

またシャドリも前線に積極的に顔を出すためフォーメーションは実質3-2-4-1のような形。右はシャドリとデ・ブライネのコンビネーション、左はアザールの個人技。

 

15・19分と続けざまにアザールがチャンスを迎えますが得点には結び付きません。また21分には CK からアルデルヴァイレルドがシュートを放ちますがロリスのスーパーセーブに阻まれます。

 

ベルギーのサイド攻撃に対してフランスは両翼を下げないで4-3-3のブロック守備で対応し、3トップはカウンターに備えます。

 

フランスの3トップを高い位置に置いておきたいという狙いに対してベルギーが仕掛けた罠。それは中盤で常に4vs3の状態になることです。試合を支配しようとするベルギー。

 

しかしベルギーの誤算はルカクフェライニにボールが収まらなかった点です。今まではフィジカル面で相手を圧倒していましたがこの試合では鳴りを潜めます。ブラジル戦の後半もこんな感じだったかな。一線級のCB相手になかなかボールが収められないルカク。この結果前線で時間をうまく作り出せません。押し込み切れないベルギー。

 

一方のフランスの攻撃はグリーズマンを軸にボールと人が動きます。この試合で脅威になっていたのはマテュイディ。持ち前のダイナミズムを発揮して左ハーフスペースに飛び出してチャンスを作り出します。

 

またフェライニがポグバに対してマンツーマンで対応していますが技術面ではポグバのほうが上なのでフェライニを剥がしてそこから展開してチャンスを作り出そうとします。

 

しかしベルギーに支配されているため攻撃機会自体が少ないフランス。

 

ブラジル戦の勢いそのままにフランスを攻めるベルギー。しかし得点には結び付きません。

 

このままベルギーペースで進むと思われましたが徐々に試合の流れが変わります。

理由としてはベルギーに不用意なボールロストが目立ち出しフランスのショートカウンターが機能し出したからです。

 

ボールロストで特に目立ったのはデンベレ。攻撃時はポジショニングが悪くリズムを妨げ、守備時は相手選手に簡単にはがされてファウルで止めるような場面が散見されます。フランスに狙い撃ちされるデンベレナインゴランがいたらなぁ。

 

前述のように中盤でベルギーが数的優位なのにもかかわらずなぜボールロストが増えてしまったのか。

 

その理由としてあげられるものは二つあります。


・カンテ・マテュイディの驚異的な守備範囲とグリーズマンの中盤での守備
・3列目との距離感

 

一つ目の理由は仕方ないです。特にカンテに関しては異常です。分身でもしているのか?

 

しかし二つ目の理由は前線でボールが収まらない事と関係しています。前線で時間を作れないためにライン全体を押し上げる事が出来ず中盤が空洞化してしまいます。その結果デンベレがボールを運ぼうと不用意なパスやドリブルを行いフランスの餌食になりました。

 

ベルギーの不用意なボールロストからグリーズマンを軸とした鋭いカウンターでチャンスを作り出すフランス。カウンターだからといってエムバペばかりが目立つわけではありません。31・34分と続けてジルー、37分にグリーズマン、39分にパバールがカウンターからチャンスを迎えます。 パバールのシュートは止めたクルトワを褒めましょう。

 

結局フランスの流れのまま前半終了。


前半終了スコアは0-0ですが最初の流れをものに出来ずに対応されたベルギーと我慢強く守り終盤にかけて流れを掴みだしたフランス。後半に不安があるのはおそらくベルギーの方でしょう。何かしら策を練らないと厳しいよ。


エンドが変わって後半のキックオフ

 

マテュイディの見事なダイアゴナルランからジルーがシュート。前半から何度も見せていたプレー。するとこのプレーで得たCKからウムティティのゴールでフランスが先制します。結局前半から修正できなかったベルギー。

 

その後もカウンターからチャンスを作るフランス。クルトワのスーパーセーブに助けられます。それにしてもデンベレの守備は軽い。

 

するとそのデンベレが交代します。散々だったデンベレ。代わって入ったメルテンスは右に入りデ・ブライネがセントラルの位置に入ります。

 

フランスはここで両翼を下げて4-5-1に変えます。完全に守りに入りカウンター狙いのフランス。

 

これに対してベルギーは代わって入ったメルテンスが右サイドに張ってクロスを上げます。ターゲットはルカクフェライニ。しかしルカクは両CB、フェライニにはポグバが付きます。マンツーマンで封じようと思ったら逆に封じられたフェライニ

 

ポゼッションは完全にベルギーが支配。しかしブロックの外で回す時間が長くチャンスはメルテンスとデ・ブライネのクロスからしか生まれなくなります。あとはアザールの個人技。

 

ベルギーはフェライニに代わってカラスコ、フランスはジルーに代えてエンゾンジを投入します。さらにフランスは負傷によってマテュイディに代えてトリッソを投入。マテュイディはMOMと言っていい活躍でした。

 

エンゾンジがアンカーの位置に入りカンテがインサイドハーフ、トリッソがサイドハーフグリーズマンがトップの位置に入ります。

 

エンゾンジ投入によって高さを加えたフランスはベルギーのロングボールをことごとく弾き返します。このロングボール攻撃ならばフェライニを代える必要あったのか?シャドリに代わってバチュアイも投入したので尚更よくわかりません。

 

フランスは試合終盤時間稼ぎに入ります。うまくリスクマネジメントをするフランス。しかしエムバペの行為は正直少し失望しました。勝利に貪欲と言えばそうなのかもしれないけどそんなことしているとネイマールみたいになるよ。

 

このまま試合終了。

 

フランスが3大会ぶりに決勝進出です。


総括

前半に試合を支配したものの見事に対応したフランスと対応された後の次の手、つまりプランBがなかったベルギー。ここがこの試合を分けた一番大きなポイントだったと思います。フランスが選手の対応力、交代策ともに一枚も二枚も上手でした。この「臨機応変な戦術」はW杯を勝ち上がっていくうえで欠かせないものなのかもしれません。

 

 

おすすめの一冊を紹介 part1

今までと少し方向性を変えてこれからはおすすめの一冊を紹介する記事も書いていきたいと思います。もちろん今まで通り分析記事も書きます。

記念すべき第一回を飾るのはこの本です!

 

モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー [ レナート・バルディ ]

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感想(2件)

footballistaでお馴染みのレナート・バルディさんと片野道郎さんが対話形式で現代のサッカーについて語る本です。

 

「ポジショナルプレー」・「5レーン理論」・「偽SB」といった現代サッカーに欠かせない戦術トレンドの詳しい解説からペップシティの分析やチーム分析の際のフレームワークといったところまで詳しく書いてあります。

 

さらに特筆すべき点として「戦術的ピリオダイゼーション」の考え方に基づいた練習メニューを実際に公開している点です。世界のトップレベルのチームがどのような考え方で練習しているのか学べます。こんなことまでしていいのかと思ってしまうほど詳しく書いてあります(笑)

 

これを読めばあなたも欧州の最先端を学べます!

 

皆さん是非一度読んでみてはいかかでしょうか?

 

ベルギーが仕掛けた罠~ブラジルvsベルギー~

ベスト4進出をかけたビッグマッチ。

質・量ともに上回る優勝候補のブラジル相手に日本を倒したベルギーはどのように挑んでいくのか。

どちらかというとベルギー推しの筆者はベルギーの分析を行います。

(PT=ポジティブトランジション・NT=ネガティブトランジション

 

ベルギーの戦術と狙い

この試合ベルギーはいつもとは違うフォーメーションで挑みます。

攻撃

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守備

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普段は1トップ+2シャドーのベルギーですがこの試合の守備時には3トップのような形を取りルカクがサイド、デ・ブライネが偽9番の位置に入ります。また左WBのシャドリが内に入りインサイドハーフ、右WBのムニエは後方に下がってSBに移動して4-3-3の形を取ります。

 

この狙いとしては主に2つあるでしょう。

 

1.ルカクがサイドに流れることによってフェルナンジーニョと高さのミスマッチを作るとともに攻めあがったマルセロの裏を狙う

ブラジルの攻撃の生命線はネイマールコウチーニョーマルセロのトライアングルです。実際この試合でも全体の40%以上が左サイドからの攻撃でした。特に前半は積極的に上がってくるマルセロの裏のスペースをルカクが狙う場面が見受けられました。またマルセロが攻撃参加している時にはフェルナンジーニョカバーリングしていましたがルカクはそのミスマッチを突いてクリアボールでの空中戦で何度も競り勝っていました。カゼミーロなら違ったかも。一方のべルギーもムニエ・フェライニの2人がブラジルのトライアングルに対してかなり苦労し何度もピンチを作られていましたが。

 

2.デ・ブライネを偽9番で使うことによってNTの時にプレスの先鋒にするとともにPTの時にカウンターの起点にする

NTの時にデ・ブライネは積極的に前線からプレスをかけてプレスバックも積極的に行いました。狙いはショートカウンター。またリトリート時は中盤に吸収されてブロックに加わり4-4-2のような形になります。一方PTの時には積極的に前線に顔を出してカウンターの起点となります。ちなみに今までは3-4-2-1のセントラルMFの位置で使われていたデ・ブライネ。やっと本来のポジションで起用されて持ち味を発揮できました。メルテンスも悪くはないんだけどね。

 

 このフォーメーションで大切なのは可変システムを機能させるWB。特に左WBに抜擢されたシャドリは今までレギュラーとして起用されていたカラスコ程は攻撃力はないですが運動量はカラスコ以上です。またカラスコジョーカーとしてベンチに置いておけます。こういったところからもマルティネス監督が戦術を機能させるために工夫してきた事が伺えます。普段からやればいいのに(小声)

 

一方のブラジルもこれに対して対抗してきます。後半からフィルミーノを投入して4-4-2にフォーメーションを変更します。あからさまにサイド攻撃を重視。その後Ⅾ・コスタを投入、マルセロもポジションをあげて実質3-5-2のような形になります。

 

これに対してベルギーはWBを下げて5-3-2のフォーメーションを敷きます。サイドのクロスを抑えにいくよりも中央ではじき返す作戦。ここでマルセロがポジションを変えたためにルカクとマッチアップするのがCBのミランダになります。ルカクを抑え込むミランダ。すごいな。この結果ベルギーは前線でボールが収まらなくなっていき防戦一方に。レナトのヘディングであっさりと一点を返されます。大丈夫か。

 

すると負傷したシャドリに変えてヴェルメーレン、さらにルカクに変えてティーレマンスを投入します。あくまで守りにいくベルギー。前線にはアザールが入ります。控えの層も考えると仕方ない。ベルギーはその後もブラジルの猛攻を何とか凌いで逃げ切り勝利を収めます。クルトワじゃなかったら逆転されてたかも。分かりやすいデータとしてブラジル-ベルギーでクロス数24-6・クリア数6-27。よく耐え忍んだベルギー。

 

手駒がブラジルに比べて絶対的に少ない中で見事な勝利を収めたベルギー。マルティネス監督の采配が光ったといえるでしょう(特に前半)

 

ちなみに今までのベルギーはお世辞にも戦術的とは言えませんでした。デ・ブライネ本人が監督の戦術に対して不満を持つほどです。実際タレント頼みだったし。

 

www.goal.com

news.livedoor.com

 

しかしブラジル戦で見せたのはこれまでとは全く違うベルギー代表でした。

マルティネス監督も「選手たちが完璧に実行した」と語っています。

 

 

チーム一丸となってつかんだ勝利。 

続くフランス戦も厳しい戦いですが覚醒した赤い悪魔がこのままの勢いでレ・ブルーにも一泡吹かすかもしれません。

 

 

 

イングランドのセットプレーを考察する

今大会ベスト8まで勝ち上がったイングランド

 

躍進を支えている大きな要因の一つが「セットプレー」です。今大会イングランドは9ゴールを挙げていますがそのうち4ゴールがCK・FKから生まれています。さらにPKでの3ゴールの内2つはCKからファールをもらいました。

 

なせこれほどまでに今大会のイングランドのセットプレーは脅威になっているのだろうか。それぞれの試合で考察していきたいと思います。

チュニジア

この試合での狙いとして最もわかりやすいのはこのツイートでしょう(筆者よりも遥かにわかりやすい)

 

 

イングランドは徹底して同じような戦術で戦いました。普通ならば高身長でヘディングの強いケインは競り合いに使いますが、あえて使わずフリーになりやすい場所で使うことによってケインの決定力を遺憾なく発揮させました。

 

パナマ

戦術家たちの間でも話題になっているのがCKからストーンズが決めたゴール。

 

このCKで行われているのはバスケットボールでは「スクリーン」と呼ばれるプレーです。

 

www.youtube.com

 

簡単に言うとボールマンをマークする相手選手に対してスクリーナーと呼ばれる選手が壁の役割を果たすことによってボールマンをフリーにする戦術です。

 

ちなみに佐々木クリスさんのツイートにもある通りこれはピック&ロールではありません。オフボールスクリーンです(ピック&ロールの方がみんな知ってて分かりやすいかもしれませんが)

 

 

動画を見てわかる通りスクリーンには様々な形がありますが、サッカー界ではまだここまでは浸透していません。しかし今大会を機に変わっていく可能性もあります。

 

コロンビア戦

この試合でも今までとは違うセットプレーを見せます。

 

相手のCBコンビ(ミナ&Ⅾ・サンチェス)の空中戦の強さを考えて中央では勝負せずにファーサイドマグワイアにボールを送り込みその折り返しを狙います。しかしこれがうまく機能しなかったイングランドは別の作戦を取ります。

 

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最初にC・サンチェスの背後に選手を集めることによってケインが背後に走り込もうとしたときにブロックされるのではないかという印象を彼に与えます。その結果反応が少し遅れたC・サンチェスはケインを後方から追いかける形となり結果的にファールに繋がりました。

 

以上が今大会のイングランドのセットプレーの考察です。このように細かく分析すると奥が深いセットプレー。未開拓の場所でありこれから発展していくであろう場面です。さらにセットプレーは他のサッカーの場面に比べてほかのスポーツとの関係性も大きい場面です。戦術家たちの間でもバスケットボールやハンドボールといったところからヒントを得ようとしています。

 

これからのセットプレーの発展から目が離せません。

 

「日本サッカーの日本語化」について考えてみる

近年の日本サッカー界は欧州で流行している新しい言葉が次々と入ってくるようになった。「ハーフスペース」・「ポジショナルプレー」・「戦術的ピリオダイゼーション」。「デュエル」もその一つと言えるだろう。

 

欧州のトップレベルで使われている用語を比較的容易に知ることができるようになったのは良い点であることは間違いない。

 

しかし我々日本人はこれらのカタカナ語を正しく理解できているのだろうか。これらの言葉の意味を共通認識できているのだろうか。表面上理解したつもりでいるだけなのではないか。

 

では正しく理解するにはどうすればいいのか。そこで出てくるのが「日本語化」だ。

 

では「日本語化」とは一体どのようなものか。先日筆者はfootballistaでお馴染みの林舞輝さんの講習会に伺った。その時に林さんは「劇場版名探偵コナン作戦をすべし」とおっしゃっていた。非常に身近で分かりやすい例えだった。2016年に公開された「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」。もし口頭でこの説明をされたならば大半の小学生はおそらくこの映画のイメージができないのではないだろうか。ただ「悪夢」という漢字を使えばどうだろう。誰もがイメージできるようになっているのではないだろうか。これこそが「日本語化」だと思う。

 

野球界では正岡子規が「日本語化」を行った。「ピッチャー」は「投手」、「バッター」は「打者」といった風に誰もが共通して理解できる言葉に置き換えた。日本で野球がこれほど広まっている理由の一つであることに間違いないだろう。

 

これと同じことを日本サッカー界でも行っていく必要があると感じている。例えば「デュエル」は「決闘」、「インテンシティ」は「強度」など。もちろん今例に挙げた「日本語化」が正しいとは限らない。「デュエル」は「1vs1」、「インテンシティ」は「密度」といった解釈もあるだろう。

 

ただ少し矛盾するかもしれないが最も大事なことは「日本語で考える事」だと思う。「日本語に置き換える」ことではない。考えて、共通認識を作り上げていく。何も全ての言葉を訳せと言っているのではない。ただ訳すのでは意味がないし、今の段階で共通認識できているような言葉(FK・CKなど)は全く必要ないからだ。「日本語化」において大事なのは言葉を聞いて誰もが共通認識できるような言語に変えていくことだ。つまり日本サッカー界の辞書をこれから我々が作っていかなければならないのではないだろうか。

 

この道のりは途方もなく長く険しいものだと思う。リアルタイムで次々と新しい用語が生まれてきているからだ。ただこれを疎かにし、曖昧なままで進めていくのはこれからの日本サッカー界の発展の妨げになることは間違いないだろう。